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| 拙者の名は、聞き耳半蔵。日々、忍術を習得せんと精進する一介の忍者でござる。拙者の使命は、山を下りて忍法を使いこなし、男女の"色恋沙汰"を聞き出すこと。何故、忍びの者にそのようなことが必要か、それはお師匠様曰く、人情の機微を知るため。拙者はその尊いお考えに応えるべく、コーヒー忍者を襲名したでござる! |
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| 忍忍。ここは、GINZAの裏手にあるニューヨークスタイルのカフェでござる。まぁ、正直そんなに美味いというわけではないが、少し上の世代のカップルを探すのにはもってこいの立地条件ではある。拙者は素早く店内を見渡し、目ぼしいカップルの近くに座った。その男は四角い大きな顔に脂を浮かべ、しきりに汗を拭っている。何やら落ち着きがなく、焦っているようだ。一方、女は背を向けていてよく見えないが、水商売を生業とした者特有の派手なスーツスタイルで決めている。すると男の方が、弱り抜いた声で「話せないよ、やっぱり」と言った。「……社長サン、結婚スル結婚スル言ウニ全然シテクレナイヨ!」 |
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| フィリピーナはそう言い放つと席を立ち、こちらに向かって歩き始めた。彼女と目が合ってしまった拙者は、すかさず忍法“NHK講座の術”を用いた。つまり、「ハングル語講座」のテキストを太腿の上に忍ばせ、ハングル語で独り言を言うという術でござる。こうすれば、2人を「韓国人が何か言ってらぁ」と思わせることができるのだ。案の定、拙者の思惑通り社長は恥も外聞もなく、「待って。だ、大丈夫だから」と呼び止めた。ただ、その言葉を聞いて立ち止まったものの、相変わらずフィリピーナの表情は硬い。「ヨーコ……」 |
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| ヨーコは「モウ働ケナイ。ワタシ帰サレル」と寂しげに言った。確かに、最近はフィリピンパブの摘発が盛んでござる、社長としても苦笑いをするしかなかろう……。しかし、そこで社長はあろうことか「お金の心配はいらないよ?」などと言うではないか。それはそうだろう、社長なのだから。そして、ヨーコはダメ押しとも取れる衝撃的な一言を発したのであった。「ワタシ、社長サンノ子供産ミタイヨ……」 |
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| 仕舞いにはヨーコは泣き出し、社長はだんまりを決め込み、場の空気は凍りつき……(以下略)。とにかく拙者はもう、この雰囲気には耐えかねるでござる。草原を思わせるような風を、爽やかな大気を拙者に! 今すぐ外へ、できるだけ遠くへ行かせてくだされぇぇえ!……カムサハムニダ。 |
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| 今回の教訓はズバリ、「火遊びもほどほどに」でござる。このような事例は、カフェではあまり見られない種類のものではあるが、拙者のように邂逅できた折には“NHK講座の術”が必須となる。ただ、これは“朝●カルチャーの術”でも代替できるので、テキストにこだわる必要はない。 |
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