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| 拙者の名は、聞き耳半蔵。日々、忍術を習得せんと精進する一介の忍者でござる。拙者の使命は、山を下りて忍法を使いこなし、男女の"色恋沙汰"を聞き出すこと。何故、忍びの者にそのようなことが必要か、それはお師匠様曰く、人情の機微を知るため。拙者はその尊いお考えに応えるべく、コーヒー忍者を襲名したでござる! |
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| 忍忍。今回は、南青山にあるこじゃれたカフェに来たでござるが、特においしいからというわけでもなく、ガラス越しに気になるカップルが目に付いたからに過ぎない。いつものパターンであれば、実際近づき耳をそばだてることで任務が始まるわけだが、この2人の場合は、その氷のように冷たい雰囲気が元より気がかりであった。「ホントに恋人同士なの?」という疑問を持たれるかもしれないが、否、そのくたびれた空気が何よりも恋人であることを証明している!……ただ、問題はこのカップルは全く会話を楽しもうとしない。拙者が30分かけて拾った言葉は、「ちょっと寒いね」「ああ」「それおいしいの?」「うん」「そうか」、わずかにこの5つでござる! |
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| 言葉がいらないほどツーカーの仲なのか、冷め切っていてもはや会話が成立しないのか……やはり、後者であろうと思われる。なぜか?それは一目瞭然だった。彼も彼女もお互いを見ないからでござる。彼は腕を組み、クソ面白くもない壁にかけられた絵を見上げ、彼女は肩肘をついてストローの袋をいじくっている。……この状況を打破するには “アムロ、行きます!の術”しかないでござる! つまり、ここはスクランブル出動し勇猛果敢に目的に向かうアムロの如く、絶望した周囲を鼓舞するスタンドプレーが必要なのである。「何をする気だ、アムロ!アムロだと!?」そんな声が聞こえてきても、拙者は2人の灯火は消えてはいないと信じるでござる! |
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| そんな拙者の情熱が伝わったのか、彼らは次なる目的地を目指すべく席を立った。しかし、当然「次はどこ行こうか?」「う〜ん。キディランド♪」なんてやりとりは皆無である。一体、彼らはこの後どこに向かおうというのか。拙者は、囚人のように重々しい足取りで店を出た2人を追ってみたでござる……が、すぐさま2人は表参道の交差点で立ち止まった。まさか!? そのまさか、彼女は少しだけ間を作った後で、地下鉄に乗らんと階段を下りていった。そこには、ただ残り香のような深い沈黙だけがあった。 |
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| どの角度から見てみても、その無言のやり取りからは、相手に対する名残惜しさや物足りなさは微塵も感じられなかった。単純に帰るサインとして成り立つ、わずかばかりのジェスチャー。こんなにも早い時間にデートが終了するのには、ちゃんとした訳があるのかもしれない。だが、いずれにせよ、もはや乃木坂方面に消えて行った彼を追う気は起きなかったでござる。あの哀愁たっぷりの背中を見てしまったら誰だって!……あしからず。 |
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| 今回の教訓は、「沈黙から何を感じ取ることができるか」でござる。本来聞き耳は、会話あってこそのものであるが、当然このような事例にも対応できなければならない。ただ正直なところ、この術は拙者がガンダム世代であることから強引に導き出されたものでござるが……。 |
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