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恋愛小説『男の本音』
『四回目のデート』(後編)
 今年の夏は「ダイビング」に挑戦したい、そんな目標を掲げたものの、すでに八月も半ばだった。ただ、思い切ってできなかったのには理由がある。つまりは、一人でではなくマサコと一緒に始めたかったからだ。第一、俺の企画に対してマサコは何と言うだろうか…

…多分あの独特の苦笑いをしながら、「え、面倒臭くない?」とでも答えるのだろう。それにしても、ここ最近めっきり一緒に何かをした記憶がない。休みの日に都心に出てみても、「疲れたね」と言い家に帰ってきてダラダラするか、ビデオを見るかといった感じで、はっきり言って新鮮味というものはなくなってしまっている。マサコはわがままじゃないし、あまり感情的にならないから付き合うのはとても楽だ。ただ、その「楽さ」の中に安住してしまっているのもどうかと思う。もう付き合って三年経つし、生活や立場も安定してきたし、お互いそろそろ将来のことを考える時期に入るべきだろう。だから、せっかく夏休みを合わせられたことだし、なんとなく過ごすのはどうしても避けたい。そんな中で一緒にやれるものがないかと考えあぐね出した答えが、「ダイビング」だった。元々俺もマサコも海は好きで、付き合い始めたころから泳ぎにいくにしろ、ドライブにしろ、何かと海にまつわるデートが多かった。また、実際マサコは「海行ってないね」とも言っていた。


『“一緒に”趣味を楽しめる恋人』についてどう思いますか?

男性グラフ 女性グラフ
やはり男女共に共通の趣味があるというのも、重要なポイントであることがわかりますね。“一緒に”というといろんなスポーツがありますが、季節的にも今もっとも盛り上っているのがダイビング。Koidas編集部まりこの友人では、ダイビングを通じて恋人関係や結婚に結びついた確率がかなり高いのです。ある意味危機的状況な海でドキドキを味わうことで「恋愛感情」も生まれやすいかも。いざという時さりげなくサポートしてくれる彼に、男らしさを感じる女性も多いでしょうね。言葉がなくても楽しめるので、マンネリ気味の恋人同士にもいい刺激になるかも。ロマンチックな青い空間に包まれながら、二人の愛をはぐくむ…くぅ〜! とりあえず、スクールの資料請求しときましょ!


 根拠はないが、とにかく先々同じ趣味を持っていられたらうまくやっていける気がするのだ。そして、休日が合わない分それだけ一緒にいる時間を大切にしなければならないと思う。例え漠然とではあっても、マサコとの未来を考えるにつけ、現実的なプランを立てていく必要性を強く感じるようになった。お互いがそれぞれ好きなように過ごして、会いたいときに会うというのではこれ以上の関係は期待できない……ただ、その同じ趣味がどうしてダイビングなのかと聞かれたら困ってしまう。もちろん、ダイビングじゃなきゃいけないという理由はないし、ダイビングは簡単にできる「遊び」でもない。自分のビジョンをうまく伝えてかつマサコを説得する、これは楽ではないが、ぜひともやらなくてはならない。「自分のためではなく、二人のためのダイビング」、これを念頭に置いて話せば理解してくれるはずだ。
 仕事を終えオフィスを出ると、昼間の熱気が嘘のように気持ちのよい風が頬をさらった。マサコは、もう家に帰っているだろう。明日は半休だし、できればこのまま会いに行って交渉したい。マサコが店長になってからというもの、仕事後に会うことはすっかりなくなってしまっていたが、当の夏休みは来週に迫っていたし、そうでもしなければ実現することはできない。俺は駅までの道すがら、電話をかけてみた。六回目の呼び出し音で諦めようとした瞬間に、「はいはい」という気だるい声が返ってきた。
「あ、今話しても大丈夫?」
「うん。もう家だから」
出てくれたものの、確実にテンションは低い。これは、うまく切り出さないといけない。
後編へつづく・・・

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プロフィール

青木勇気
名刺には「フリーライター」とあるが、実際は自称・他称ともに売れない小説家、もしくは地味なコピーライターだったりもする。
休日(というか、ある意味毎日が休日)は、趣味のフットサルに明け暮れる。
最近ハマっているのは、セガフレードの「ブラッディオレンジグラニータ」。
著書に『梨花、』(新風舎)がある。
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